プレスリリース

玄海原発3号機の核燃料装荷の実態について




 2010年12月11日、一次冷却水への放射能漏れを起こした九州電力の玄海原発3号機は、手動で発電を停止した。

 その後、炉心の冷却が進み、193本ある燃料集合体を一体ずつ原子炉から取り出し、外観検査、シッピング検査を経て、原子炉中央部にあった、3サイクル目のガドリニア入りウラン燃料体から放射能漏れが発見された。
 ところが、ここで、大きな問題が浮き上がってきた。

【問題点1 原子炉内の核燃料の配置が申請書の内容と異なっていた】


 佐賀新聞(2011.01.19)によると、装荷した燃料集合体の内訳は、
 1サイクル(初めての装荷)使用したのがMOX燃料16体とウラン燃料64体、
 2サイクル(二回目の装荷)がウラン燃料76体、
 3サイクル(三回目の装荷)は今回漏えいが確認された1体を含むウラン燃料37体が装てんされていた。

とのことである。

 ところが、九電は、今回のMOX(プルトニウム入り)燃料を使用するにあたって、国に「設置変更許可申請書」を提出し、その承認を経て、今回のMOX燃料の使用が可能となっている。
 その申請書には、今回の装荷に対する燃料配置図が示されている。
 そこに記載されている内容は、
 1サイクル(初めての装荷)使用したのがMOX燃料16体とウラン燃料60体(ガドリニア入り燃料は4体)
 2サイクル(二回目の装荷)がウラン燃料68体(ガドリニア入り燃料は28体)
 3サイクル(三回目の装荷)はウラン燃料49体(ガドリニア入り燃料は9体)と記載されている。
また、配置も、今回漏えいした燃料集合体の場所には2サイクル目のガドリニア入り燃料が入ると申請書には記載されている。

なぜ、申請書とは異なる装荷を行われているのだろうか。
ちなみに、関西電力の高浜3号機は、申請通りの装荷であるという。


ここで、もう一度、MOX(プルトニウム入り)燃料の許認可について、図で示したい。


上二図は、原子力安全・保安院 平成17年9月の説明資料からの抜粋


設置変更許可申請書から抜粋した、玄海3号機の炉心燃料体配置図(1/4の配置)<ただし、色分けは著者が行った>




【問題点2 ガドリニア入り燃料からの放射能漏れか否か】


 今回、放射能漏れを起こした燃料集合体は「ガドリニア入り燃料集合体」であった。
 放射能漏れを起こした集合体の中で、漏れを起こした燃料が、ガドリニア入り燃料か否かは、今後注目すべき点である。

 全国的に見ても、新燃料であるガドリニア入りのウラン燃料は放射能漏れを起こす確率が高いのではないだろうか。
 ガドリニアは、ウランの核反応を抑制する効果があり、長期間の燃料使用を目的とした開発された。燃料被覆管も過去のものよりは強靭なものになっている。
 にもかかわらず、ガドリニア入り燃料は従来のガドリニアが入らないウラン燃料に比べ、放射能漏れを起こす確率が高いように思われる。

 これは、ガドリニアによって燃料の反応速度が制限され、燃料被覆管の内圧が上がらず、原子炉内圧に押され続けていることに起因しているのではないだろうか。

 四国電力では、その旨の報告書が出されている。

このウラン燃料に比べ、高い燃料被覆管の収縮はMOX燃料にも言える現象であり、MOX燃料を危険視する大きな要因となっている。

以下は四国電力が平成22年6月11日に原子力安全・保安院に提出した報告書の一部抜粋


 通常のウラン燃料(青線)とガドリニア入り燃料(黒線)の被覆管内径の推移を見比べて頂きたい。グラフの曲率に変化があるのが、各サイクルの境を意味している。3サイクル目、横軸の照射時間が25000のあたりで両者の差は、0.02mm強となっている、燃焼初期からの変化で言うと、8.36mmあった内径が、ウランは8.3mm(0.06mmの収縮)になり、ガドリニア入り燃料は8.28mm(0.08mmの収縮)と被覆管内径が小さくなっていることを示している。
 両者の収縮率は、約1.3倍(3割)も違うことになる。
 このことが、燃料漏れを起こす原因ではないかと四国電力は推測している。




 眞部九電社長はガラス張りの情報公開を公言しているにも関わらず、九州電力本社に今回の放射能漏れに関連して、その安全性、許認可権について質問すると
 「国がなんと言おうと(玄海原発3号機は)九電の所有物ですから!」との発言まで飛び出した。これはどうとらえればよいのだろうか。

 社長の意向が一社員まで届かず、会社としての信頼性を損なう事態となっている。
 危険で一般的に市民の目が届かない原子力産業の体質を垣間見る思いだ。



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