プレスリリース

九州電力の玄海原発3号機の一次冷却水への放射能漏れ事故について




 昨年12月11日に日本で初めての本格的なプルサーマル発電は、燃料棒からの一次冷却水への放射能漏れを起こし、発電を停止した。

 私たち市民グループは、いち早く、一次冷却水のヨウ素の放射線レベルの上昇を受けて、即時停止を求めて活動した。



【事故発生から原子炉停止までの対応】

九電の動きは以下のようだった。
★9日午後0時半ごろヨウ素131(放射性物質)の放射線量が通常の倍となったと発表
この間の放射線量の推移は以下の通り、
 通常の放射線量は0.15Bq/cm3  (8日も含めて)
 9日の放射線量は0.30Bq/cm3
 10日の放射線量は0.59Bq/cm3

そして、11日手動操作によって、原子炉は発電を停止した。

ところで、平成22年10月に電気事業連合会が作った資料
「PWR燃料棒からの放射性物質漏えい時の監視方法について」には、 つぎのような記載がある。

 「燃料リークを断定する基準として、ヨウ素131の濃度が通常値の2倍以上」

 この基準から照らして、すでに、9日の時点で燃料リーク発生とみなしてよいことになる。原子炉が停止するのは、その2日後の11日である。
 なぜ、燃料リーク発生の判断が下されたのにも関わらず、原子炉停止までにこれほどの時間がかかったのだろうか。

 この間、全国から「原子炉停止」の声が寄せられていたはずである。にもかかわらず、2日間も運転し続けた。
今回は、幸いにも、大事故にならなかったのは、不幸中の幸いである。

 また、上記資料には、ヨウ素131とヨウ素133との比率についても、リークの進展についての有用な判断材料としてあるが、九電からは一切、その発表はない。一次冷却水に漏れた核種(原子分裂時に生じた原子)の分析はどのようになっているのだろうか。原子炉の中の燃料被覆管からの漏れがどのような状態なのか、迅速に正確に伝えるのが、信頼性への一歩ではないだろうか。




 【燃料漏れ検査の信憑性】

 九州電力は、これまでも、燃料棒からの一次冷却水への放射能漏れ事故を起こしている。
 私たち市民グループは、燃料漏れ事故の原因について、問いただしたが、「原因不明」「確率的な事故」として、未だに燃料被覆管(燃料棒のサヤ)のどこから漏れたか、漏えい個所すらわからない状態で原子力発電所内のプールに放置されている。

 今回は、日本で初めての本格的なプルサーマルなのであるから、原因不明ではすまされない。
 九電の後に続き、プルサーマルを実施している関西電力高浜3号機も、今回の九電の事故を踏まえて、ヨウ素131の濃度測定を週一回から、ほぼ毎日の監視に切り替えた。
 これほどに、初めて行う本格的なプルサーマルは不安要素がいっぱいなのである。

 一番の関心はなんといっても、今回の燃料漏れがMOX燃料で起きたのか、それ以外の燃料で起きたのかだ。

 九電は、燃料集合体を一体ずつ、取り出して、検査すると言っている。しかし、この検査の過程で、結果のすり替えが起こらないか、不安が募る。

 実は、燃料棒を取り出す前に、ウラン燃料からの漏れか、MOX燃料(プルトニウム)による漏れか、一次冷却水に漏れ出した、微量の放射性物質から原理的には推定することができるのである。  なぜ、今回、その手間を省いて、取り出しを急ぐのか。
 どのような手段を用いて、検査の信憑性を高めるか、九州電力への信頼が問われる。

 また、幸いにして、今回の燃料漏れが、MOX燃料でなかったとしても、燃焼途中のMOX燃料の健全性をどのように検証するかも、なんら、具体的な検査法も示されていない。




【情報の開示性と体質】

 九州電力に対して、質問状等を出すが、未だに口頭での回答であり、文書での回答がない。
 また、申し入れなど行う際にも、別室を設けず、ロビーでの対応である。
 九州電力は、顧客である一般消費者を粗末に扱い、会社としての社会性を欠いている。
これは、今の社会からして到底許されるものではない。




 このような不確実で、不安定な状態で、危険を冒す必要などない。
 プルサーマルを実施しても、何も得るものは無く、高い危険と持ち出すことができないほどの高い放射性廃棄物が残るだけだ。未来の子供たちにこれ以上犠牲を強いてはいけない。
 ただちに、プルサーマルは中止すべきである。